2024年2月27日-2025年2月12日 読書会Vol.1-7「阪神大震災は演劇を変えるか」を開催しました。

国境なき劇団では、災害からの復旧・復興のプロセスに演劇がどのような役割を果たしうるのかを考えるべく、ネットワーク会員の皆様と、災害とアートに関する文献を読み深めるオンライン読書会を定期開催しています。

読書会では事前に読んでいただかなくても参加いただけるよう、前半に朗読を行い、後半は気になった言葉や、他の人に意見を聞いてみたいワードについて、参加者同士でお話する、という流れで進行します。

第1弾は、「阪神大震災は演劇を変えるか」(編集:内田洋一・九鬼葉子・瀬戸宏 晩成書房)を全7回かけて読了しました。

読書記録

Vol.開催日時読書記録
Vol.12024年2⽉27⽇
20:00-22:00
朗読:ののあざみ
p6.-p31.「はじめに―阪神大震災が突きつけたもの―」「廃墟に立つ人間の力」
Vol.22024年3⽉26⽇
20:00-22:00
朗読:ののあざみ
p.32-p64.「震災と”父の不在”」「演劇の公共性」
Vol.32024年5⽉2⽇
20:00-22:00
朗読:ののあざみ
p.65〜83「関西演劇人会議の活動」
Vol.42024年6⽉19⽇
20:00-22:00
朗読:ののあざみ
p.84 -97「被災地激励演劇活動の意義‐ピッコロ劇団の場合」
Vol.52024年7⽉29⽇
20:00-22:00
朗読:ののあざみ
p.98 -120「兵庫子ども劇場おやこ劇場協議会と被災地巡回公演」「フラワーテントとボランティア無料公演」
Vol.62024年11⽉25⽇
20:00-22:00
朗読:ののあざみ
p.122 -137「リアリティの『震災後』」「日常と非日常のはざまの身体感覚」
Vol.72025年2⽉12⽇
20:00-22:00
朗読:ののあざみ
p.138 -160「演劇は現実とどう関わるのかー神戸とサラエボの距離ー」「演劇評論家が見た阪神大震災」

読書会を終えて

2024年2月より全7回かけて開催してきた「阪神大震災は演劇を変えるか」(編集:内田洋一・九鬼葉子・瀬戸宏 晩成書房)のオンライン読書会が2025年2月に最終回を迎えました。
こちらの書籍は30年前に発行されたものですが、当時の人たちが直面した問題や葛藤は、今の時代も色褪せることなく、私たちの道しるべとなっているように思います。

この本は「非常時に演劇は果たして有効か?」という問いかけから始まり、様々な演劇人の取った行動や、内面の葛藤が語られました。この本の中に正解は書かれていませんが、読書会を進める中で大きなキーワードとして浮かんできたのが「物語」でした。ここで言う「物語」は、震災前にあった暮らしが、震災によって変わってしまった、または失われてしまったことを指します。災害が起きると、ニュースや新聞では発災以降のことばかりが語られ、瓦礫の山がいかに利便性のある街に生まれ変わったかという話に重点が置かれます。しかし、それではまちで長らく暮らして来た人の心は晴れません。なぜなら、元々そこにあった暮らし、人との繋がりや、土地や風景、文化との繋がりが断ち切られたままだからです。もし、震災前の暮らしに目を向け伝える手段があれば。物語を伝えることが出来れば、そこで暮らす人の心を含めたまちの復興が見いだせるのかもしれません。ここに演劇が関わることが出来ると思いましたし、国境なき劇団の目指すものがひとつ、見いだせたような気がしました。

毎回、読書会では能登の状況や、参加者自身が置かれた地域独自の状況と照らし合わせながら活発な意見が交わされました。また、読書会で意見を重ねる中で、国境なき劇団がこの先どういう存在であり続けたいのか、掲げる言葉のひとつひとつの重さを問い直していけたようにも思います。

今後は別の文献で読書会を継続していく予定です。これまでとは違う、また新しい問いが出現することでしょう。もしかしたらこれまでの考えたことを覆すようなものに出会い心が揺らぐかもしれませんが、皆さんと一緒に考えていければ幸いです。

(担当:中嶋悠紀子)

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